私は今日も、虚構(キミ)に叶わぬ恋をする。

「何って、見りゃわかんだろ。バイトだよ、日給15000円の」

「聞いてないよ! ていうか、テルルーから出てよ! テルルーの可愛いキャラが壊れる! 最悪だよ!」

「バーカ、これ脱いだら俺が支配人に怒られるっつの! 
何お前、わざわざこんなところに遊びに来るほど『エレアル』好きなの? オタクかよ」

「お兄ちゃんには関係ないでしょ!
ていうか、テルルーの姿でそんなこと言わないで!」


私とお兄ちゃんが言い争ってると、周りにちらほらと人が集まってくる。


「あ、テルルーいた! ……でも、なんか揉めてる?」

「クレーマーにでも絡まれてるのかな? テルルーかわいそう〜」

「でも、なんか喋ってなかった? テルルー、人間の言葉話せないはずなのに」


これはまずい……色々な意味で。

私はお兄ちゃんにさらに近づくと、小声で囁く。


「と、……とにかく、写真撮ってよ一緒に! 後の文句は家で言うから」

「なんで真面目にバイトしてて妹に文句言われなきゃいけねぇんだよ……」


ぶつくさ言いつつ、お兄ちゃんはキュートな横ピースとウインクをかましてくれた。
言わずもがな、テルルーの姿で。


「わ、わあぁ〜、可愛いなぁ〜……」


そして言わずもがな、私は棒読みである。


「優星くん、写真お願いしてもいい?」

「あ、あぁ……うん」


戸惑う優星くんにスマホを構えてもらい、私とお兄ちゃんは、実に十数年ぶりにツーショット写真を撮ったのだった。

……何これ?