「ここで大丈夫。ありがとうございます。」
そう言って食堂の前で車椅子をとめる咲。

真岸に支えられながらなんとか立ち上がる。
「ありがとうございます。」
真岸はいつものように、車いすを廊下の端に寄せる。

咲は大きく深呼吸をしながら、食堂の扉を開けた。


そこにはすでに咲の父が座っていて、咲は頭を深く下げる。

「遅くなり申し訳ありません。」
頭を下げてから父の方にちゃんと視線を向けた瞬間、その後ろに控える人物に驚く。

咲の父の後ろに立っていたのはほかのだれでもない。玲だった。