「点滴が終わる頃また来ます。ゆっくり眠れるように点滴の速度を遅くしていますので、朝までは終わりません。対応が早かったから大事は免れましたが、危なかったですよ。」
高齢の医者が玲に告げる。
「代表には言おうか悩むところですが、お嬢様の心の健康が今は非常に心配です。あまり目を離さないこと。それから、専門医にかかることもおすすめします。」
「ありがとうございました。」
医師に深々と頭を下げ見送った玲。
懸念していたことが現実になり、考えがうまく進まない。

まだ意識のない咲が眠るベッドの横に座り、寝顔を見つめながら玲は、咲になにができるか無理やり考えを進めようと唇を噛み締めた。

限りのある時間。
のこりの時間でなにができる?
何を残せる?

いっそ孤独の世界から連れ去りたいとすら思いながら、咲を見つめ続けた。