「どうしたらいいかわからないこともたくさんあった。つらいこともたくさんあった。どうして私はこの家に生まれたんだろうって思ったこともあった。でもね、私は私に生まれることができてよかったって思えた。」
「うん」
「私がそう思えたのはお父さんやお母さん、玲や玲のお母さん、克子さん、清次さんや真岸さん・・・たくさんの人に支えてもらったから。」
ふっと微笑む玲。
その手はしっかりと咲の手を握って離さない。

「私には向いてないって今も思ってる。会社を経営することって思ってるよりもすごく難しくて、本当に難しくて、逃げ出したいって思うことがたくさんあった。私じゃなかったらって、自分がすごく嫌になることもたくさんあった。」
「うん」
玲はいつだってそばで見て来た。
悩んで、葛藤して、苦しんで。
それでも前に進む咲を。

小さな体を震わせながら悔しそうに唇をかみしめながらも、立ち向かって来た姿を。