「行きましょう」
「そうね」
咲はまた歩き出す。
前はこの廊下で、唯一の希望が窓から見える庭園だけだった。

でも今は違う。
食堂に向かう道のりも、父との食事も、苦ではない。
むしろ父と向き合うチャンスだと思っているくらいだ。

真岸が食堂の扉を開けると、そこにはすでに政信が座っていた。

「遅くなりました。申し訳ありません。」
咲が頭を下げると政信は咲に座るように言った。

「寝不足か」
何度も一緒に食事をするようになって政信は咲の変化に気づけるになった。
「少し。」
「なんだ」
「え?」