「もっと言うと、何故和博と付き合うのにOKを出したのかも、分かってない」
 5年も一緒にいたのに、好きか嫌いか結局分からなかった。

 視界の端で、キラキラ輝く緑の砂山が出来ていく。落ち切るまで後3分半くらいかな。
 その間に決着(ケリ)をつけなきゃ。

「そんなん言われて、納得行くと思う?」
 聞かれて、ゆるゆると首を振った。
「だったら」
 机上に置いたままの私の手に伸びてきた彼の手をスッと避けるようにかわすと、私は静かに和博を見つめ返す。
「納得して欲しいとは思ってない。でもこのままの状態を続けていくことは……私が納得いかないの」
 溜め息を落とすように静かにそう告げたら、和博が息を飲んだ。

「美代子は好きでもない男と5年間も一緒にいたってこと?」
 ややして消え入りそうな声音でそう問いかけられた私は、その言葉にも首を横に振った。
「それ、どういう意味?」
 戸惑いに揺れる瞳で和博が私を見つめてくる。
「分からないの。でも……今のままはダメだって、それだけは分かる」
 あと2分ぐらいかな。
 スマホの時計表示と、砂時計の砂の残量をちらりと見て思う。
 あれが落ち切るまでに、砂時計を横倒しにして、私は席を立つの。
 アイスコーヒーをもう一口喉に落として、そんなことを考える。