「なんか、これは…、もう……」
ドキンドキンと痛いくらいに反応する心臓の音は、まるでカメラのシャッター音。
いろんな彼の仕草や表情を、次々と脳裏に焼きつけていく。
風を含んでふんわりと揺れる、ちょっぴり長めの黒髪。
スッと通った鼻筋に、スッキリとしたフェイスライン。
目を伏せたときの、色っぽい表情。
イケメン過ぎないイケメン。
あたしの理想とする、ほどよいイケメン。
彼だ。
彼があたしの運命の人。
「あらら。やっちゃった」
クラスメイトが小さくため息をついた。
やっちゃいました。
恋、しちゃいました。
「今度は誰?」
「まぁ、頑張って」
クラスメイトたちの呆れ顔なんて気にしない。
だって。ドキドキが止まらない。
こうなったら突っ走るしかないんだよ。
サクラ色に似た、淡い淡いピンクの花。
『恋』という名の花があたしの中でぐんぐん育つ。
蕾はゆっくりと。
でも確実に膨らんでいく。
このときを待ち望んでいた。
花ひらく日も、きっとそう遠くはない。



