イケメンは眺めるだけ、なんて偉そうに言ってるあたしは。
『地元ではちょっとした有名人』でも『美少女』でもないのだけれど。


「ぎゃーっ。かっ…、かわいいっ」

伊達先輩が大きなあくびをしただけで興奮するクラスメイトたち。

「ほんとだー」

あたしはそれに参加しながらも、キョロキョロと辺りを見まわして男の子を物色中。

理想は。
豪華な花でも高価な花でもなく、道端にひっそりと咲く花を好むようなひと。
ちっぽけな花にも水やりを欠かさずに、「今日もかわいいね」って、優しく声をかけるようなひと。

どこにでもいる、ふつうの女の子。
そんなあたしを見つけて。

「好きだよ」
「おまえじゃなきゃダメだ」

そんな言葉も出し惜しみしないひと。

あたしだけを見ていてくれるひと。
そんなひとが。

「華乃?」
「どうした?」
「なになに?」

クラスメイトたちがあたしの視線をたどる。

「もしかして、」
「また?」
「運命の人でも見つけちゃった、とか?」

その言葉にあたしは大きく頷いた。


いたよ。
見つけちゃったよ。

あたしの視線の先には、春の陽射しをめいっぱい浴びて笑う彼。
動物的カン、ってやつ。
彼ならきっと、あたしのこと大事にしてくれる。
そんな根拠のない自信が、またたく間にあたしの感情を支配する。