「知ってる?伊達センパイ、彼女と別れたらしいよ」
「えっ!?ほんとにっ!?」
「春休み中に別れたんだって」
「やだ。なんか、ドキドキしてきた」
「なんでよ」
「だって。わたしにもチャンスが、」
「ありえないでしょー」
そんなやりとりを、お母さんが作ってくれたお弁当をつつきながら聞いていた。
登下校時には先輩を一目見ようと、校門付近や利用する駅に他校生が待ち構えていたり。
『先輩と同じ学校に通いたい』という理由でうちの学校を受験した子もいるらしい。
そんなイケメンを眺めながら食べるお弁当は、最高においしい。
同じ校内にいられるという優越感も、ハンパない。
でも。
きゅん、ってしない。
ときめかない。
彼女たちのように、もしかしたら、って期待はしない。
先輩の隣に並ぶ自分を想像したりもしない。
伊達先輩に限らず、先輩レベルのイケメンに対してはいつも。少しも。
あたしみたいなふつうの女の子が先輩の彼女になるなんて、どう考えてもムリな話で。
そう思っているせいか、イケメンにはセンサーが働かない。
眺めてるだけで満足なの。



