「とりあえず、追試は免れたことだし。ご褒美になにか食べて行かない?」
「ご褒美って…。成績が上がってからにしたら?わたし、ちょっと買いたいものがあるんだ」
「じゃあ、付き合う。なに買うの?」
和葉の横に並んで歩くあたしの肩に突然、ポンと置かれた手。
ポン、というよりは、ガシッと。
「やっと見つけた」
………え?
前に進もうとしていたあたしの体と、それを阻もうと加わった力。
後ろに引っぱられるようなその力で、あたしの体は簡単に傾いてしまった。
「………わ、」
傾いた体が支えられる。
なんだか前にも似たようなことを経験したような。
ほら。滅多に経験できない。
マンガやテレビの中だけの、あのワンシーン。
まさかね、と思いながら振り向いた。
「う、……そ」
振り向いた瞬間、目が飛び出すんじゃないかと思った。
だって、まさかの。
「お、う……た、くん?」
間違いない。
毎日のように思い浮かべる、あたしの、運め……。
あぁ、この言葉は口にしてはいけないやつだ。
ドキドキと動く胸に手を置いた。
幻覚…?
ううん。幻覚じゃない。
肩に置かれた手の感覚が今も残ってる。
あたしを見下ろす旺太くんの唇が動いているけれど、なにを言っているのか、理解するには困難な精神状態だ。
まっしろ。そう、まっしろ。
頭の中が白に染まる。



