髪をひと束ねじってはヘアクリップで留めていく。
残した毛をピンッと引っぱったあと、鎖骨の上のあたりを指で押さえた。
「この辺りまで切っちゃっても大丈夫?」
「は、はいっ!」
「よしっ」
トモキさんがハサミを動かす。
鏡の中のトモキさんは、何だか楽しそうだ。
そんなトモキさんを見ているあたしも。
髪の切られる音、髪がケープを滑り落ちていく音を聞いていると、ドキドキが増す。
どんな自分になれるのかと、ワクワクが止まらない。
「華乃ちゃんは、おでこを出した方がかわいいと思うんだ。前髪は今より少し多めに作って、サイドに流していくね」
自分でもわかる。
鏡の中のあたしは、さっきまでのあたしとは違う。
トモキさんの手で変わっていく自分を見つめる目がキラキラしてる。
ドキドキ、ワクワクでピンク色に染まる頬。
自然と上がる口角。
「うん。かわいい!」
切り終えた髪をコテでクセ毛っぽく巻いてくれたトモキさんが満足そうに微笑んだ。
「わぁ。すっごく似合ってる」
「いいじゃん、いいじゃん!かわいい、かわいい」
レイラさんとハマダくんに褒められて、照れくさかったけど。
大満足のあたしはトモキさんに何度もお礼を言った。
清楚とか、清純とか。そんなのは関係なくて。
『あたしはあたし』なんだ。
旺太くんに会ったら、胸を張って言おう。
「ワンコインの女?なにそれ。誰のこと?」って。



