ラブホリック。



「……あたし、くっきり、ぱっちりな二重じゃないし。鼻も高くなくて。……自分に自信がないんです。だから、好きな人の理想にちょっとでも近づきたくて」

胸まで伸びた髪をひと撫でする。
高級トリートメントのおかげか、傷んだ毛先もなんとか誤魔化せていた。

「旺太くんって、清楚なかんじの子がタイプなんじゃないかなぁ、って思って」

好きな人の理想に近づけば自信が持てた。
けど、なぜかいつも違和感だけが残る。
あたしは、どうしたいんだろう。
鏡に中の自分に問いかけてみたって、答えなんか返ってこない。

顔をのぞき込むようにして首を傾げたトモキさんが、あたしの前髪を掬い上げる。
おでこのアザは幸い、薄く目立たなくなっていた。

「華乃ちゃんのおでこって、とってもいい形をしてるよ。唇だって、羨ましいくらいにふっくらしてるし」

トモキさんは、コンプレックスに思っていたところを褒めてくれた。
肌が綺麗だとか、首が細く長くて綺麗だとか。
自分でも気づかなかった長所を見つけて褒めてくれた。

「旺太の好みってより、華乃ちゃんに似合う髪型にしよう」

今まで、おまかせします、と言ったことがない。
いつも、こんなかんじで、と。
理想の「誰か」になろうとしてきた。

トモキさんに任せてみようか。


「お、…お願いします!」