ラブホリック。

***


「あ、まただ。何度目のため息かな」

お兄さんが小さく笑う。
どう返せばいいのかわからなくて、唇をきゅっと結んだ。


今日は旺太くん情報を手に入れに来たんじゃない。カットしてもらうために来たんだ。

おでこのアザを見るたびに、無性に会いたくなった。
見ず知らずの女子高生の願いを叶えてくれた、お兄さんに。ふんわりした笑顔で癒やしてくれた、お姉さんに。
あたしを変えてもらいたくて、ここに来た。

ここのオーナーであるトモキさん。
トモとはただの同僚だよ、と笑ったレイラさん。
今日はシャンプーを担当していたハマダくん。
みんなに笑顔で迎えられたら、泣きそうになった。


「どんな感じにするか、決まった?」

トモキさんが鏡の中のあたしに微笑みかける。

「………えっと、なんていうか」

ハマダくんが用意してくれたヘアカタログはページをめくることもせず、膝の上に乗せたまま。

「清純、っていうか。清楚?……そういうかんじにしたくて」

えへへ、と笑ってみせたけど。
ぎこちない笑顔になってしまったことは、自分でもわかる。

「どうしたの?」
「何かあった?」

その言葉を聞きたいような、聞きたくないような。
すごく複雑な気分だ。

トモキさんが、あたしの髪をすくってはこぼす動作を何度か繰り返す。
おかしな注文をしてしまったことが、なんだか急に恥ずかしくなった。
それを誤魔化すように膝の上のヘアカタログをペラペラとめくる。

何気なく手を止めたページには、自信ありげに微笑むモデルがいて。
何だかとても惨めな気分になった。