怒りをぶつけるように思いっきり体を当てる。
体勢を崩したリュウちゃんは、背後にあった机にぶつかり倒れ込んだ。
右手を掴まれていたあたしもそのまま道連れだ。
ガツン、と。
鈍い痛みが走る。
「……いっ、てぇ」
「……っ、」
この場でうずくまっているわけにもいかない。
体の痛みに耐えながら立ち上がると、スクールバッグを掴み教室を飛び出した。
「ちょうどよかった。今、」
「行こう」
「……え、どうしたの?」
あたしを迎えに来た和葉の手を取り、和葉を引きずるようにして教室を離れた。
「ちょっと、どうしたの?」
「出た、の!」
「出た…、ってなにが?」
「変な生き物!」
床にぶつけた膝が痛い。
倒れてきた椅子が当たったおでこも痛い。
一瞬だけ、そのまま残してきたリュウちゃんのことを気にかけてしまったけど。
掴まれていた右の手首がジンジンと痛くて。
体のあちこちが痛くて。
当然の罰だよと、リュウちゃんの姿は、吐き出した息とともに消し去った。
数日後。
駅のホームでリュウちゃんの彼女を見かけた。
数人の生徒と一緒にいた。
その中のひとりの男子生徒と仲良さげに話していて。
あぁ、そうか。そういうことか。
ケンカしたのか、別れたのか。
リュウちゃんと彼女の関係がギクシャクしていることは確かだ。
なぜあたしのところに来たのか、その理由がわかってしまって。
余計に悲しくなった。



