ラブホリック。



あたしのクラス、覚えてたんだ。
っていうか、知ってたんだ。

その驚きのほうが先だった。
だってリュウちゃんは、あたしのことなんてまるで興味がなかった。
誕生日も、血液型も。好きな物、嫌いな物。
連絡先以外はなにひとつ訊いてこなかった。

……それにしても、なんだろう。
今さらなんだっていうの。

「貸したものも、借りたものもないし…」
「ほんとに?」
「うん、ほんと。多分、ほんと。……なにもなかった、と思う」

「あー、もうっ。ハッキリしないなぁ」
「ほんとに何もないの?」
「思い出さない?」
「よーく考えてよ?」

いや、べつに。
そんなに食い気味にこられても…。

「また来ると思うよ」
「ねっ!私もそう思った」
「しばらくは気をつけたほうがいいかも」

「……うん。ありがと。気をつける」

クラスメイトたちは気が済んだのか、次の授業が始まると言ってゾロゾロと教室から出て行く。
それを見た和葉があたしの腕をツンツンとつつく。

「華乃も戻りなよ。次にもし先輩が来ても、こっちに逃げてくればいいし」
「うん。そうする」

じゃあね、と手を振って自分の教室に戻る。
きっとまだ『神崎センパイが来た理由』で盛り上がっていることだろう。

彼女たちはあたしに興味があるんじゃない。
あたしが次になにをしでかすか、ということに興味があるだけ。