髪をひと撫ですれば幸福感で満たされる。
髪がサラサラと肩を撫でたときには、思わず、ふふっと息が漏れた。
もうすぐ期末テストがやってくるというのに、授業中でも口元は緩みっぱなし。
テスト対策なんて先生の言葉は聞き流し、ノートの隅に『運命』の文字を書く。
『運命って言葉は使わないほうがいいと思う』
和葉から出された、なんだかよくわからない課題もなんとかこなしている。
そう。
書いているだけで、口には出していない。
口にしたいけど、グッと堪えてる。
ほんと、成長したよ。
「誤魔化さない……、本質を……」
ノートの隅に書いた『運命』をバツで消し、すぐその下に『ごまかさない』『本質を見抜く』と書き込む。
こなしている課題の、答え合わせをする日はいつになるのだろう。
そもそも答えなんてあるの?出せるの?
多分、そこに関しては和葉もお手上げなんだと思う。
あれからなにも言ってこないし。
出題者がわからないのだから、あたしにわかるわけがない。
「ふはぁぁぁ、」
ため息と欠伸が入り混じる。
その音は思いのほか大きく響き、先生に名指しで注意されてしまった。



