ラブホリック。



膝の上に乗せたお弁当箱からナゲットを箸でつまみ上げた和葉は、それを自分ではなくあたしの口元に持ってきた。
遠慮なくパクリと口の中に迎え入れると、今度はブロッコリーが運ばれてくる。

「運命を信じてないわけじゃないけど。……なんていうか。わたしと華乃とでは、違う」
「……んんっ?」

なにが違うの?

口の中を空にしようと一生懸命に噛み砕き、ゴクリと飲み込む。

「運命って言葉の、価値観?捉え方?……が、違う。わたしが100とすると、華乃は50。……もっと下、かも」
「なにそれ。数字なんかで表わさないでよ。しかも、なんで和葉が100なのさ」
「あ、ごめん。例えばのはなし。だって、どう表現したらいいか、わからないんだもん」

空になったお弁当箱を片付けはじめた和葉がもう一度、ごめん、と謝った。

「その、旺太くんって人との出会いは、わたしも運命だとは思うよ。わたしと華乃が友だちになったこととか、同じ高校に通うことになったのと同じで」

和葉の、きちんと揃えられた膝が小さく上下に動く。
体が冷えてきた証拠だ。
ブレザーのポケットに両手を突っ込むと、肩をすくめて話を続ける。

「だけど。華乃はすぐに『人』とか『出会い』って言葉を『運命』にくっつけちゃうから。なんか、安っぽく聞こえちゃうんだよ」
「やっ、……安っぽいっ!?」