ラブホリック。

***


「うー、さむっ」

ブレザーの上から激しく二の腕をさする和葉。

「そうでもないよ?」

鼻をすすりながらも、おにぎりにかぶりついたあたし。

十一月も中旬に差しかかったころ。
曇り空も手伝ってか、中庭でお弁当を食べるにはちょっぴり肌寒い。


「まったく…。信じられない」
「怒らないでよ。教室にいたら、我慢できるものもできなくなるっていうか」
「そんなの知らないよ」
「それくらいわかってほしいよ」

昼休みの教室には、唐揚げとかハンバーグとか。お弁当のにおいがプンプンと漂っている。
そんな中、おにぎりひとつしか食べられないあたしを不憫だと思わないの?

外で食べようと提案しても、クラスメイトには猛反対されるし。
仕方なくひとりで食べようとしたけど、ぼっちだと思われたくはないし。
飲み物おごるから、と言って、嫌がる和葉を連れ出した。

「あんたのやること、っていうか。考え方っていうか。ほんとくだらないと思う。面倒くさい」
「うわー。それ、いっちばん言っちゃいけない言葉だよ。サイテー。あぁ、信じらんない」

お母さんから半ば強引にもらった昼食代。
コンビニでおにぎりをひとつだけ買って、おつりは残しておく。
それを数日続ければ、欲しい物が買える。

バイトをしていない女子高生が、お小遣いを増やそうと地道に頑張ってるというのに。
くだらないとか。面倒くさいとか。
失礼じゃない?