ラブホリック。



「じゃあ、また」

会計を済ませたらしい旺太くんは、トモ兄またね、と言うと、お兄さんの返事を最後まで聞くことなく店を出て行ってしまった。


「はぁーーーっ」

息を細く長く吐き出せば、体がズシリと重く感じた。
緊張してガチガチに硬直していた体のあちこちが痛くてたまらない。

「はい、おしまい」

柔らかな表情をしたお兄さんが、てるてる坊主からいつもの女子高生に戻してくれた。

たったの1センチやそこらのことで、こんなにも雰囲気が変わるものなのか。
今なら「こんにちは」って、とびきりの笑顔で言えるのに。

……やば。
なんか、泣きそう。

本物に出会ってしまったからなのか。
胸の奥がパンパンに膨らんで、肺を圧迫しているみたいに息苦しい。

「いやぁ、新鮮だったよ。新鮮、新鮮、」

あたしの肩を揉みほぐしてくれるハマダくんに、熱を帯びた目に滲む涙を気づかれてしまうんじゃないかと心配になった。

「緊張すぎて、見ること、できなかった」
「あはは。ガッチガッチに固まってたもんねぇ。いいよね、なんか。初々しい感じがさ。久々にキュンとしちゃったよ」

応援してるよ、と言ってくれたハマダくん。
ギリギリのところでとどまる涙に気づいていないのか、気づいているのに知らんふりしてくれているのか。

けっこういいひとだったりするのかも。
ちょっとだけきゅんとしちゃった。

ありがとう。
あたし、がんばるよ。