ラブホリック。



どうしよう。
本物だ……。
ほんとの、ほんとの、本物。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。

すごく、すっごく会いたかったけど。
会いたかったんだけど。
あたし今、てるてる坊主じゃん。

「こんにちは。先日は助けてくれてありがとうございました」とか。
こんな格好して言えないでしょ。


あ…、う…、あう…、あー…

鏡に映ったあたしの口がパクパクと動く。
心臓はドキドキを通り越し、バクバクと激しく動く。


「このまえ頼んだやつ、まだ届いてない?」

耳に滑り込んできた旺太くんの声で、体がブルッと震えた。
ゾクゾクした、っていうか。

『………大丈夫?』

あの声をすぐ近くで耳にしたんだと思うと、心が震えちゃったんだ。


「きのう届いたの。トモから連絡いかなかった?」
「もらってない」
「そうなの?」
「うん」
「ごめんね」

旺太くんとお姉さんの会話に集中するあたしの耳元でお兄さんが言った。

「捜してたのはあいつで間違いない?声、掛けなくていいの?」

その言葉に首を横に大きく振る。
鏡に映った自分の顔があまりにも赤かったから。

「……ムリですぅ」

旺太くんのほうを見ることもできないのに。
こんにちは、なんて挨拶できるわけない。