ラブホリック。



どうしよう。
どうしたらいい?

「……えぇっと、」

ここ数日、実感してる。
運が味方してくれている、ということを。
あたしの運気は今、右肩上がりだ。
深呼吸を繰り返せば、きっとお告げが聞こえるはず。

吸って吐いて、吸って吐いてを繰り返す。


【………前髪】

ん?
前髪……?

ふと、頭の中に浮かんだ言葉。

そっか。

「前髪だけカットしてください!」

ほら。
焦ったときこそ冷静になるべきなんだ。


シャキン―…、シャキン―…
お兄さんが動かすハサミの音が心地いい。

「一本一本ていねいに、ですよ?ゆっくりでいいので」
「あはは。りょーかいです」

自分で言うのもなんだけど。
図々しいにもほどがある、っていうか。
前髪をカットするのにどれだけ時間を割いてもらってるだろう。
鏡の中のお兄さんはイヤな顔ひとつしない。
見ず知らずの女子高生の願いを叶えてくれるなんて。いいひとすぎる。
なんだか泣きそう。


「あんな絵で、よくオウタくんだってわかりましたね」
「オウタのことは、アイツが保育園に通ってるときから知ってるからさ。ピンときたよ」