ハマダを無視して目の前の救世主にすがりつく。
「あの…っ、王子……じゃなくて、オウタくんにはどうやったら会えますかっ?高校は?どこの高校ですか?」
どんな情報でもいいから欲しかったのに、お兄さんは黙って首を横に振った。
「………もしかして、」
「うん。キミみたいな子が、たまにここに来るんだよね。オウタのこと訊きに」
やっぱり……。
「一度ね、うっかり喋っちゃったことがあってさ。気をつけてはいたんだけど。なんか、そのあと大変な目にあったらしくて」
だから教えられないんだ、と。
そんな子と一緒にしないでください。
なんて言ったところで、初対面の人間を簡単には信用しないだろう。
それなら。
「カットで!カットお願いしますっ!ちょうど切りたいと思ってたところなんです!」
まずはあたしを知ってもらわなくちゃ。
怪しい人間じゃないってことと。
あとは、オウタくんに助けてもらったお礼がしたいということを。
お兄さんがオウタくんの情報をうっかり漏らすことも、正直、心のどこかでは期待してるけど。
「………あ」
そういえば。
たしか、財布の中にはお札が一枚。
しかも、千円札ときた。
……お金がない。



