「まさか」
「これで?」
「イケると思ったの!?」

あたしの力作を指をさして、クラスメイトがゲラゲラ笑う。

「イケると思ったよ。だから持ってきたの」

あたしの本気が伝わったのか、みんなが顔を見合わせる。
ヤバくない?そんな顔をして。

「どう見てもダメでしょう」
「誰だかわからないって」

机の上の彼を眺め、肩をすくめるクラスメイト。
ひとりくらい「いいんじゃない?」とか、言ってくれてもいいのに。

そりゃ、美術の成績は良くなかったけど。
気持ちを込めて描いたんだから、伝わるものはあると思うの。
たった1%でも可能性があるのなら、チャレンジする価値はある。


「おはよう」

クラスメイトの千穂(ちほ)がにっこり笑って輪の中に入ってきた。

「あ、おはよう」
「ねぇねぇ。千穂はさ、これ見て誰だかわかる?」
「華乃が捜してるんだって」
「これじゃあ、誰だかわからないよね?」

指されたノートを手に取った千穂。
首を傾げると、肩で切り揃えた髪がサラリと揺れる。


「見たことあるよ」


………え?
今、なんておっしゃいました?


「この人、知ってる」

千穂が指をさしてるのは、まちがいない。


「えーーーーーっ!!」
「マジでーーーっ!?」
「ウソでしょーーっ!」