【プリントアウトができないなら、自分で描けばいいんじゃない?】
お風呂に入っていたとき、そんなお告げが聞こえてきた。
そうだよ。
なんでそんな単純なことを、もっと早くに気がつかなかったんだろう。
慌ててお風呂から出て、クローゼットの中から箱を引っ張り出す。
クラフト地で蓋のついた箱には、ごちゃごちゃといろいろなものが突っ込んである。
途中で書くのをやめた日記帳とか、小学校の頃に集めていたシールとか、初めてもらったラブレターとか。
「……あった!」
もう使うこともないだろうと思っていた色鉛筆のセットを取り出す。
スケッチブックなんてものはないから、適当に手に取ったノートを開く。
「目は、こんなかんじでクリッとしてて。ここにホクロが、ちょんちょん、って」
目のまわりの長いまつげは一本一本ていねいに描いていく。
頭にバスタオルを掛けたまま、夢中で描いた。
描いているときは、ドキドキ、ワクワクして。
あぁ、久しぶりの王子様だ、なんて。
思わずノートを抱きしめてしまいそうになる。
もうすぐ会える。
なぜだか自信しかなくて。
会えたときになにを話そうとか、考えながら床を左右にゴロゴロと転がっていた。



