「……と言ってみたものの、」

あれから毎日駅で待ち伏せしてるのに、彼とは再会できずにいる。
今日で捜索七日目だ。


「はぁぁぁ」
「ちょっと。やめてくれない?」

不機嫌そうな表情でオレンジジュースを飲んでいた和葉が、あたしに負けじと大きなため息をついた。

「なにがぁ?」
「ため息ばっかり聞きたくないの。それにさ、毎日くだらない用事に付き合わされてるのに、その報酬がたったのこれだけ?ありえないでしょ」

氷のいっぱいつまったカップを指でつつく和葉。

「だからMサイズにしてあげたじゃん。今月は、ちょっとキビシイんだよ」

捜索を打ち切ったあと、付き合ってくれたお礼にと、駅前のファストフード店に連れてきてあげたのに。
頬杖をついて窓の外を眺めながら、とりあえず、ごめんなさいね、と謝ってみる。

「……ありえない」
「うん、ありえない。ホント、ありえない。こんなに会いたいって思ってるのに、会えないなんてさ。ありえないよね?」

和葉の口から何度も吐き出される言葉がうつってしまったらしく、気づけばあたしまで『ありえない』を連発していた。

彼を見つけ出す方法はないだろうか。
SNSとか、思いついくものでいちおう検索してみたけれど。

いっそのこと、警察に捜索願を出してみるとか。

ばかじゃないの?って、却下されるだろうな。
チラリと盗み見した和葉は、相変わらず不機嫌そうな表情でストローをくわえていた。