「オレは。付き合おうなんて、ひとことも言ってない」
両手をポケットに突っ込んだまま肩をすくめたリュウちゃんは、あたしと目を合わせようとしない。
「……う、そだ」
「ウソじゃないって。思い出せよ。三分待ってやるから。夏休みのさ、図書館でのこと。ほら、早く」
左腕の時計に視線を落としたリュウちゃんは、いじめっ子のようだ。
そういえば。小学生のとき、何かとあたしに突っかかってくる男子がいた。
リュウちゃんとその子の顔が重なる。
「……三分って、なに?」
ふつうに考えたらわかるでしょ。
こんな精神状態のあたしに思い出せるわけがない。
たったの三分だよ?
……っていうか。
なんで三分なの。
ウル○○マンじゃあるまいし。
あぁ、ちがう。
そこに疑問を抱いちゃダメなんだ。
思い出せ。
早く、早く。
「ハイ、おしまい」
「え…?」
「三分経った」
『一ヶ月前』『夏休み』『図書館』『受験生のリュウちゃん』『好きです』
言葉をつなぎあわせる前に終わってしまった。
三分が、あっという間に。



