「華乃が?」
「イケメンに!?」
「一体なにが起こったの!?」
「こわっ」

昨日の出来事は、これまでの生き方をガラリと変えるものだった。
そのことをみんなに伝えると、想像していたとおりの反応をしてくれたので、ニヤニヤが止まらない。

みんなが驚くのもムリはない。
あたしが超絶イケメンに恋をするなんて、人生初のことだもの。
なにより、自分がいちばん驚いてる。


「ほんとに王子様みたいだったの」

顔面偏差値が高いのはもちろんなんだけど。
見た目は華奢な感じなのに、あたしの体を平気で支えていられるくらい、たくましくて。

「で?そのイケメンは、学生?社会人?」

ズズズッとクラスメイトの顔が近づく。

『華乃がイケメンに恋をした』
それを知ったクラスメイトは、いつもとはうって変わって興味津々だ。

「たぶん、高校生。制服着てたんだけど、どこの学校かわからなくって」
「えっ。そうなの?」
「うん。いろいろ質問したかったんだけど、あたしを助けてくれたあと、長い足でね、ダーッと歩いて行っちゃって。消えちゃった。……あ。もちろん追いかけたよ?けど、ダメだった。あはは」
「じゃあ、なにもわからない、ってこと?」
「うん」

がっかりした顔、というよりは、呆れたって顔のクラスメイトたち。

「なにそれ」
「聞いて損した」
「つまらん」

好き勝手なことを口に出してくれるものだから、悔しくなって言ったんだ。

「いいもん。すぐに捕まえて、ぜーんぶ聞き出してみせるから」