「あ、……あのっ、……ちょっと、っ」
引き止めたところでなにを話せばいいのか、すぐには思いつかないけど。
それじゃあね、と終わらせたくなくて。
「待って、って…、言ってるのに…っ」
必死に追いかけたけど、あたしが階段を下りたとき、彼は既に改札を通ったあとで。
改札を出たときには、彼の姿はもうどこにも見当たらなかった。
たいして走ったわけでもないのに、胸が苦しくてたまらない。
『超絶イケメン=恋愛対象外』
そんな考えが、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていく。
風で揺れる茶色の髪。
まばたきしたあとの、光があつまる瞳。
なにか言葉を発しようとひらく唇。
頭の中に記録した彼の映像を再生すれば、すべてがスローモーション。
「……これは、」
これは、運命。
きっとそうだ。
運命的な出会いをしてしまったのだ。
だって。
ドキドキがぜんぜんちがう。
最高級?
最上級って呼べばいいのか。
とにかく、トクベツ。
今まで経験したドキドキとはまったくのベツモノ。
『やっぱりあたしはリュウちゃんが好きなんだ』
『簡単には忘れられないほど、リュウちゃんのことが好きなんだ』
前言撤回。
見つけちゃった。
リュウちゃんよりも、もっと夢中になれる人。
人生初。
超絶イケメンに恋、しちゃった。



