視界に飛び込んできたその顔に、まばたきするのも忘れてしまった。

きちんと整えられた眉。
その下の、二重でクリッとした茶色い瞳。
長いまつげ。
左目の下の、ふたつ並んだ小さなホクロ。

言葉を失ってしまったあたしの頭の中で、カメラのシャッター音が響いていた。

かたちのよい鼻。
柔らかそうな血色のいい唇。

目の前の王子様の顔を、無意識のうちに記録している。
自分の置かれてる状況なんてお構いなしで。
少しでも多く記録しておこうと、本能的にシャッターを押していた。


「あの、…さ、」
「………あっ、」

我にかえると、困惑した表情の彼が、茶色のふんわりとした髪に指を突っこんであたしを見下ろしている。

「……ごっ、ごめんなさいっ。えっと、……助かりましたっ!なんか、すみませんっ。ありがとう、……ございましたっ!」

たぶん、高校生だと思う。
どこの学校か、制服を見ただけではすぐにはわからないけど。

「………、」

深々と頭を下げたけれど、彼は何も言わずに歩き出した。
スタスタと、こっちを振り返りもせずに。