「ちょっとーっ。華乃ーっ」
慌てる和葉を無視して、電車を降りた人たちの波に紛れ込む。
行くあてなんかないけれど、とりあえず改札口を目指す。
「あたしは乗るよ?乗るからね?華乃ーっ!聞いてるっ?華乃!」
ちょっと。
華乃、華乃って連呼しないでよ。
リュウちゃんに聞こえるじゃん。
もーっ!いいからさっさと行っちゃってよ!
心の中でそう叫んだ直後、体がグラッと後ろに傾いた。
「わっ…、ちょっ、」
駆け込み乗車をしようとした学生の集団に、肩にかけていたカバンが引っかかり、持っていかれる。
それにつられるように体も後ろへと引っ張られた。
え。
これ、尻もちで済まされる?
……っていうか。
今日のパンツ、どんなだっけ?
できれば、さ。
貧血でフラフラと座り込んじゃうくらいのかんじがいいんだけど。
チラッとなら、パンツくらい見えてもいいし。
こんなときにかぎって、くだらないことが浮かんでしまう。
そのあとで、ブワッと一気に冷や汗が出てくるんだ。
「……うっ、く」
とりあえず、怪我したくないし。
下半身に力を入れてなんとか堪えるけど。
抵抗も虚しく、グラッと傾いた体はそのままの勢いを保って後ろへと倒れていく。
サイアク。
「……っと、」
「………え、」



