「どうしたの?運命の人でも見つけちゃった、とか?」

和葉の嫌う言葉を出して、からかう。
ムッとした表情の和葉の視線を辿ると、そこには、あたしの運命の人……。

ちがう。

運命の人じゃなくて。
不覚にも、運命の人だと思ってしまった人。

リュウちゃん。と、その彼女の姿があった。

ぐっと締めつけられた心臓が、その圧力に抵抗するかのように動く。ズキズキと痛い。


「そっか。そうだったんだ」

ずっと見てやりたいと思ってた、リュウちゃんの彼女。
風が吹くたび、栗色の、胸の下あたりまで伸びたストレートの髪がサラサラと揺れる。
あたしと同じ制服を着て。
あたしと同じような背格好をしてる。

なにが違うっていうの。
あたしとそんなに変わらないじゃん。


「面白くない」

ぷぅっと膨らませた頬。
握りしめた手には、きっと爪の痕が残るはず。

「……乗りたくない」
「え?」
「一緒の電車に乗るの、イヤなんですけど」

同じホームにいるだけで胃がムカムカしてるっていうのに。
同じ電車に乗り込むなんて、考えられない。
耐えられるわけないじゃん。