さっきも言ったけど。和葉は中学からの友だちで。
だから、あたしのことをわかってくれてて。
あたしが失恋して泣いてても、いつもサラリと流しちゃう。
「なんであんなヤツのために泣かなくちゃいけないんだろ。次よ、次!」
なんて。
思いっきり泣いたあとは、すぐ次の恋を欲しがることを知ってるから。
いつも。毎回。
だから、
「いちいち心配とかしてられないの。時間のムダ。バカらしい」
なんだって。
おかげで、あたしは失恋なんかしてないんだって錯覚に陥っちゃって。
意外と早く立ち直れたりするんだけど。
今回は、ちょっとちがうみたい。
「聞いてよっ!リュウちゃんてば、ひどいんだよっ」
前を歩く和葉の腕を掴む。
ちょっぴり鼻が低いせいか、振り向いた拍子にズレたメガネを右手の人差し指で元の位置に戻した。
「なんなの。落ち着きなよ」
「あのね。落ち着いて話せる内容じゃないんだよ、これがまた」
思い出したら腹が立ってきた。
和葉の腕を掴む手に力が入る。
「いた…っ、」
「琉星のバカがね、他に女をつくったわけ。あたしっていうカノジョがいるのに!」
「痛い、ってば」
あたしの腕を振りほどくと、ムッとした表情で掴まれていた部分を撫でる。



