「大丈夫?なんか、すげぇ音がしたけど」
ひとつ上の学年だとわかる、青色のラインが入った上履きが視界に入る。
……この、声。
頭の上に降ってきた言葉のせいで身動きがとれなかった。
四つん這いのまま、本を拾おうと伸ばした右手もそのまま。顔なんて上げられない。
だって、この声。
まさかの、リュウちゃん。
「……だっ、…だいじょぶ、です」
動揺したせいで声がうわずってしまった。
穴があったら入りたい、ってこういうときに使うんだ。
あぁ、もうっ。
こんなハズじゃなかったのに。
「ここ、置くね」
床に落ちた本を拾い集め、机に置いてくれたリュウちゃん。
「あっ…、ありがとうございますっ」
よろよろと立ち上がったあたしは深々と頭を下げた。
「気分、悪いとかじゃない?」
本を拾ってくれただけじゃなく、体調まで気遣ってくれるなんて。
あぁ、リュウちゃん。
やっぱり、いいひと。
格好悪いとこ見られちゃったけど、でもそんなのどうでもいいや。
リュウちゃんに声掛けてもらえたんだもん。
すぐそばにいるんだもん。



