「ええ。兄は元々睡眠時間が短いほうなのでもう起きて、仕事をしていると思いますよ。最近大きな案件を動かしていますし」
「大きな案件って、あの例のホテルのこと?」
何の話か知っているようなきららに、優さんはうん、と頷いて、また先程の雑談に戻ってしまった。
例のホテル? そのことについても聞いてみようと思ったけれど、まずは誠さんと連絡を取るのが先だ。それに、気になることは、もう人伝いではなく、誠さん本人に直聞いてみよう。
起きていると思う。とは言っていたけれど、既読にならないメッセージ。
通話ボタンの上に親指を置いて、その上からあいていた手を重ねて、えいっと押した。
プルルッ……
発信音に、急いで耳に当てて、繋がるのを待つ。
プッ。
繋がった!
機械音が途切れて、思わず声をかけてしまう。
「もしもし、誠さん、ゆきので――……」
おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか――……。
耳元で鳴り響いたのは、誠さんの声ではなくて、不在着信のアナウンスだった。
――忙しい、のかな。
耳から電話を話して、通話を切った。留守電は入れなかった。
「兄さんはなんて?」
振り返った優さんがシート越しに訪ねてくる。
私は首を横に振った。
「またあとでかけてみようと思います」
「大きな案件って、あの例のホテルのこと?」
何の話か知っているようなきららに、優さんはうん、と頷いて、また先程の雑談に戻ってしまった。
例のホテル? そのことについても聞いてみようと思ったけれど、まずは誠さんと連絡を取るのが先だ。それに、気になることは、もう人伝いではなく、誠さん本人に直聞いてみよう。
起きていると思う。とは言っていたけれど、既読にならないメッセージ。
通話ボタンの上に親指を置いて、その上からあいていた手を重ねて、えいっと押した。
プルルッ……
発信音に、急いで耳に当てて、繋がるのを待つ。
プッ。
繋がった!
機械音が途切れて、思わず声をかけてしまう。
「もしもし、誠さん、ゆきので――……」
おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか――……。
耳元で鳴り響いたのは、誠さんの声ではなくて、不在着信のアナウンスだった。
――忙しい、のかな。
耳から電話を話して、通話を切った。留守電は入れなかった。
「兄さんはなんて?」
振り返った優さんがシート越しに訪ねてくる。
私は首を横に振った。
「またあとでかけてみようと思います」


