「待ってるって誰と電話してたの?」

「優さんだよ~。あと三十分くらいできてくれるって」

「優さん!? えっ、連絡取ってるの!?」

 優さんは、誠さんの弟さんだ。たしか、優さんの携わっている海外の案件で誠さんもアブダビにいくことになったと言っていた。

「うん、お姉ちゃんの結婚を口実に連絡先聞いちゃったんだ~」

 きららはうきうきとしながらリップを塗り直して、マスカラも重ねている。
 ちゃっかりしてるなあ……。行動的なきららに関心しつつ、私も一応リップだけ塗り直した。

 優さんからの指示通り、空港のタクシー乗り場できららと待っている。私たち以外にも沢山の観光客がいて、まだ早朝であることを忘れてしまうほど、混み合っている。
 タクシーで来るってことだよね? 見つけられるかな。

 背の高い人が多いので、きららと一緒に背伸びして並んでいるタクシーの中を覗こうとする。
 すると、遠くから手を振りながらかけてくるスーツ姿の男性が見えた。

「きららさん! お義姉さん!」

 まるで、子供のようにかけてくる男性は、紛れもなく優さんだ。
 この人混みではタクシーのナンバーを伝えても探すのが大変だろうと、わざわざ降りて迎えに来てくれたらしい。

「すみませんっ、こんな時間に迎えにきていただいてしまって……!」

 微かに息が上がっている優さんに、私はまず頭を下げた。