政略結婚の真意、そして誠さんの想っている人……直接聞かなければならないことは山ほどあって、同時に私の瞼を熱くさせる。
 絶対に泣かない。こんなところで泣きたくない。
 深く息を吸って、窓の外の、夕焼けが混じり始めた空を眺めていた。

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 成田空港から直通便で約10時間後、朝の4時過ぎ。私ときららはドバイ空港に到着した。日本からの直通便は1日2本の深夜便しかでていないらしい。
 つまり、恐らく昼過ぎの便で向かった誠さんは韓国あたりで乗り継ぎをしたのだろう。

「んー……長かったね」

 飛行機を降りて直ぐ、大きく伸びをする。快適な飛行だったけれど、やっぱり座りっぱなしは結構きつい。
 海外にきたのはもちろん、飛行機に乗ったのだって十数年ぶりだ。

「ドバイなんてアタシ初めてだよ~どこで手続きすればいいんだろ」

 狼狽えながらも興奮気味なきららの手を引いて私は歩き出した。

「こっちだよ。標識通りに進めば大丈夫だから」

 頭上の標識に従い、巨大なエレベーターに乗って下の階に降りると、広々としたターミナルについた。日本の空港とは比べものにならないほどの広さだ。
 ターミナルでは哀愁ある歌が流れている。

「なに? 歌?」

「これはアーザンだよ」

 きららの一人言に無意識に返していて、自分でも驚いた。

「アーザン?」

「うん。イスラム教の礼拝の呼びかけの歌だよ」