私が返答に困ると、藤さんは続けた。

「それに、本来でしたらSPをつけるところですが……それは配慮いたしました。もちろん、チケットはきらら様の分も手配しておりますからお二人で行ってきてくださいませ」

 まさかの、きららの分まで手配してくれたなんて。正直、貯金があるから大丈夫……と思っていたけれど、私一人分でもギリギリな資金だった。きららが一緒にいくと言ってくれたとき断ったのは、金銭的な理由もあった。

 もう、藤さんの提案を断る理由が見つけられない。

「それから、これは旦那様から奥様に渡すよう言われていたものです」

 渡されたのは、クレジットカードだった。それもブラックの。

「お困りのことがあったらそれをお使いください」

 藤さんは、にこりと目を細める。なにもかも見透かされている気がする。
 ずっと臆病で、ようやく吹っ切れたと思ったら無謀で……本当に情けない。
 でも、ここで落ち込んだってなにも変わらない。24年間、ずっと変わらなかったから。
 顔をあげて、藤さんの目を真っ直ぐ見つめ返す。

「本当になにからなにまで、ごめんなさい。でも、ありがとうございます」

 できる限り丁寧に、藤さんに頭をさげた。藤さんがいなかったら行動するだけで、今すぐアブダビにいくなんて実現できなかったかもしれない。

「きらら、やっぱり一緒にきてくれる?」