【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ

 そんな私の感情が伝わってしまったのか彼の顔が近づいてきて、私がぎゅっと目を閉じたとき、信号は青に変わって、誠さんが「残念だな」と呟いて上体を起こす。
 飼い主にお預けを食らった子犬のような気持ちになって、それが余計に恥ずかしくてどんどん熱くなる顔を小さなバッグで隠す。

 ――キスされそうになっただけでこんな状態で、一緒に暮らしていけるのかな……。

 なんだか窓の外の夜景が綺麗な気がしたけれど、どうせ反射する誠さんのことばかり気になってしまうから、私はとにかく車が停車するまでバッグの生地とにらめっこしていた。

 ……はずなのに、急にパーティーが無事に終わったという安堵が溢れてきて、視界がぼやける。誠さんだってお疲れのはず。運転してくれているのに隣で寝てしまっては失礼だ。そう頭では分かっているのに、誠さんの愛車の上質なソファーのような座り心地が更に睡魔を誘って、私は抗えず瞼をおろした。

 体が浮く感覚がするのになぜか安心する。魔法の絨毯に乗っているような高揚感。それからふわふわの雲の上におろされた感覚で、目が覚める。

 寝起きでぼやけた視界に広がる、薄暗い部屋。きららのお気に入りの甘い香水でも、自分のシャンプーでもない香りに包まれている。夢の中と同じように安心するのはなぜだろう。ぼうっとしたまま視線だけで辺りを見渡して気付く。