【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ

「もし、ご迷惑でなければあちらでお話の続きを聞かせていただけませんか? 私、少々足が疲れてしまって」

 私は少し身をかがめて、申し訳なさげにいう。会長は微かに目を見張って「さすが、誠様の奥様だ。まいりました」と笑って、誠さんと三人で席に移動した。


 彼と会長は閉会直前まで話し込んでいた。話の殆どが難しくて理解出来なかったけれど、これからは頷くだけでなく自ら意見が言えるくらいには勉強しよう。そう思った。

「またお会いできるのを楽しみにしております」

 そう丁寧にお辞儀をしてくれた会長に私と九条さんも頭を下げて、私たちは会場をあとにする。

「あの、お電話大丈夫ですか?」

 会長さんと三人で話している最中、何度か電話が鳴っていた。三度目に誠さんが電源を切ってしまってそれきりなので気になっていた。

「ああ。ゆきのが気にすることではないよ。俺は車に戻る前に寄りたいところがあるから先に戻っていて」

 誠さんから差し出された車のキーを受け取る。私が気にすることではない、そう言った誠さんは人混みのなかをするりと抜けていって、あっという間に見えなくなってしまった。

「お仕事のことなのかもしれないけど……」

 なんとなく感じる疎外感。無力感。誠さんが私に話してどうにかなる話なんてないだろうけれど、最初から蚊帳の外なのはやっぱり寂しい。