見つめ合っていたから分かる。彼の目が一瞬暗い色に染まった気がした。
 もしかして、誠さんにとっては安物のドレスを着て隣にいられるのが恥ずかしかったんだろうか。そうだとしたら彼のお世辞を真に受けて、こうして表向きプレゼントという名目で買い換えをされているのかもしれない。

 それなら、わざわざお世辞をいってくれなくてもいいのに。処分することはできなくても、クローゼットの奥に眠らせることくらいならできたのに。今でもクローゼットの手前で堂々と主張しているドレスを思う。
 私は彼にバレないよう小さく、深く深呼吸してから、にこりと微笑む。

「ありがとうございます。嬉しいです」

 半分本当で半分嘘だ。もちろんドレスのプレゼントはすごく嬉しい。けれど、彼の本音がみえないのが苦しかった。

 彼の手が伸びてきて頬を撫でられる。彼の体温がドレスより嬉しく感じて胸がきゅっと鳴ってしまう。そしてそのまま、自然と彼の顔が近づいてきて唇が触れあう。

「寂しい思いをさせたね。すまなかった」

 至近距離で囁かれて、私は無言で首を横に振る。この人はどうして、私の心を見透かすようなことばかり言うのだろう。私の浅ましい思考が読み取られてないか、不安になって目を逸らす。

「お体、大丈夫ですか……? 夜はよく眠れていますか? お食事は……」