合わせてつくってもらうことになったパンプスのサンプルも私の足にぴったりで、新品なのに全く痛みがない。
 どれも触れたことがないほど上質な生地で、今着ているこのドレスだって、自分で買ったものとは比べものにならないくらい滑らかで手触りがいい。
 けれど、着せ替え人形状態で正直もうくたくただ。

「奥様は御足が綺麗でいらっしゃいますし、もう少し丈が短いものも素敵かと」

 差し出されたのは、ブラックのドレス。全体的にレース素材で丈は膝上くらいだ。それをみてふと自分が唯一持っているドレスのことを思い出す。

「同じくらいの丈のドレスを買ったばかりなのでもう――……」

「一着くらい増えたところで困りはしないだろう。それもよくゆきのに似合うと思うよ。……彼女は少し疲れたようだ。もう今日はこの辺にしよう」

 ただ眺めていただけだった彼が突然割って入り、断ったはずのドレスの購入を決めてしまった。誠さんの一言で、一瞬で部屋には私と誠さん、ふたりだけになる。

「誠さんは前回のお食事で私が着ていたドレス……お嫌いでしたか?」

 誠さんが今回購入してくれた数々のドレスに比べれば質は天と地との差があるだろう。けれど私にとってあれは誠さんとの初デートの思い入れがあるもので。

「いや、よく似合っていたよ……だが今日はあのドレスの代わりをプレゼントしたかったんだ」