「お知り合いの方だったんですか?」
「いや、そのときが最初で最後だったよ。もう彼女は覚えていないだろうけどね」
彼の口から出た「彼女」という言葉。少し寂しげに微笑む彼の横顔に胸が締め付けられる。最初で最後、つまりたった一度きりしか会ったことのない、傷を手当てしてくれた人を彼は覚えている。余程、その人が誠さんにとって大切な人なんだと思い知らされる。
――私、羨ましいって嫉妬してる。……その人に会ったことも、見たこともないのに。
嫌な勘だけはあたるなんて、そんな能力いらない。胸がざわついて、抑えるように膝の上でドレスを握り絞めた。
「ゆきの、来月の土日で空いている日はあるかな」
丁度信号が赤になったタイミングでこちらに顔を向けた誠さんと目が合う。危うく自分の暗い感情に押しつぶされそうになるところだった。私はにこっと口角を上げる。
「はい。実家の掃除をするくらいなのでいつでも空いています」
「そうか。じゃあ予定が分かったら連絡するよ。食事の時に話した件なんだけど、ドレスを選ばせてほしいんだ……あと、靴も」
彼の視線が私の足首に落とされて、私の顔を軽く覗き込むように首を傾げる。
「……疲れた? 無理に笑わなくていいよ」
ふっと優しく微笑まれて、ぽんぽんと頭を撫でられる。信号はすぐに青になって彼は進行方向を向いた。
「いや、そのときが最初で最後だったよ。もう彼女は覚えていないだろうけどね」
彼の口から出た「彼女」という言葉。少し寂しげに微笑む彼の横顔に胸が締め付けられる。最初で最後、つまりたった一度きりしか会ったことのない、傷を手当てしてくれた人を彼は覚えている。余程、その人が誠さんにとって大切な人なんだと思い知らされる。
――私、羨ましいって嫉妬してる。……その人に会ったことも、見たこともないのに。
嫌な勘だけはあたるなんて、そんな能力いらない。胸がざわついて、抑えるように膝の上でドレスを握り絞めた。
「ゆきの、来月の土日で空いている日はあるかな」
丁度信号が赤になったタイミングでこちらに顔を向けた誠さんと目が合う。危うく自分の暗い感情に押しつぶされそうになるところだった。私はにこっと口角を上げる。
「はい。実家の掃除をするくらいなのでいつでも空いています」
「そうか。じゃあ予定が分かったら連絡するよ。食事の時に話した件なんだけど、ドレスを選ばせてほしいんだ……あと、靴も」
彼の視線が私の足首に落とされて、私の顔を軽く覗き込むように首を傾げる。
「……疲れた? 無理に笑わなくていいよ」
ふっと優しく微笑まれて、ぽんぽんと頭を撫でられる。信号はすぐに青になって彼は進行方向を向いた。


