【現代恋愛】【完結】執着的な御曹司は15年越しの愛を注ぐ

 ホテルを出て、駐車場で車を前にして彼は立ち止まる。

「だ、だめです。おろしてください九条さんの腕が……」

 大体、男性に抱き上げられた経験なんてあるわけがない。それだけで混乱しているのにレストランから今この場所までずっとこの状態。私を支える彼の腕の心配が恥ずかしさを上回る。

「俺はずっとこうしていたいくらいだけど……そうだな、名前で呼んでくれたら離してあげるよ」

 彼がいたずらっ子のような笑みを浮かべる。

「な、なんでこの状態で……っ、一旦おろしてください!」

「うん。呼んでくれたらおろしてあげるよ」

 にっこり微笑む彼は、いたずらっ子を通り越して悪魔的だ。
 この状態でそう言われたら従うしかない。男性として意識してしまっている人を名前で呼ぶのが恥ずかしいなんて、女性慣れしていそうな彼にはわからないのかもしれない。

「……っ、まこと、さん」

 しっかり覗き込んでくる彼の視線が恥ずかしくて両手で顔を隠して彼の名前を口にした。

「……耳まで真っ赤だ」

 顔をしっかり覆っているのに感じる視線。耳に柔らかいものが一瞬触れる。
 それが彼の唇だと分かったのは、離れる瞬間、微かに熱い吐息がかかったから。
 言葉にならない声を上げる私を、彼は車の助手席のシートに座らせる。

「な……っ!」

「ほら、お望み通り離したよ……」