優が差し出した手をとる。誰より愛しい妻が、友人が、弟が信頼してくれたこの企画を絶対に成功させる。そう意気込んで再スタートを切った新ホテル計画は大成功し、オープンから8年経った今も予約は数年先まで埋まっているが、このホテルに泊まるためなら長生きしよう、とまで言われるようになった。

 桜舞い散る川辺に円になって座り、絡めた細い指と、握った小さな手。ふたりの頭に乗った花びらを摘まむと、ほどけた笑顔が咲いた。

 初めて会ったときと変わらず、万華鏡よりきらきらと輝く真っ直ぐな瞳。
 そんな妻によく似た娘の胸に輝る万華鏡。
 魔法のランプも絨毯も敵わない。なによりも大切な俺のすべてだ。


 完