「どうせアイツに暴露してないんだろ? 九条家の跡取りの権力使ってゆきののこと調べ上げて、就職先だった会社と取引始めて接点作って……オレに宇野堂でのゆきののこと報告させて……正直ストーカー……」

「ゆきのにそれを言ったらどうなるか、今試してみるか?」

 今まで何度も聞かされた言葉に、にっこりと営業スマイルを向けると、目の前の健二は「その顔がなにより怖え」と黙る。
 ゆきのに求婚したとき、思わず事細かに話してしまおうかと思っていたのを寸前で思いとどまってよかったと今は思う。これを知られたらさすがに気持ち悪がられるだろう。ストーカー……もとい、見守り期間については墓場まで持って行くつもりだ。

「なんかうまく言えねえけど、柔らかく笑うようになったな。……幸せになれよ、誠」

 席を立ってすれ違いざまに俺の肩を叩くとそのまま去って行った。

「……つくづくお人好しなやつだな……お前は」

 わざわざ休日に訪れた店を出て行く友人の姿にぼそりと呟いた頃、待ち人だった優が現れた。

「――つまり、新ホテル計画は仕様変更は行わず、海外事業部の協力も得たい、と」