「あ、あの……誠さん? あ、明日早いですしそろそろシャワーを」

「ああ。明日からまた忙しくなるからね。シャワーは後で一緒に浴びよう」

 戸惑う私に、誠さんが有無を言わさぬ笑顔を向ける。アブダビの朝日が昇り始めた頃、改めて私は、とんでもない人を愛してしまったのだと自覚せざるを得なかった。


 入籍から1週間――……アブダビから日本に帰国してすぐ、きららと健二くんに連絡をとり事の次第を説明した。

 例の彼女は私の勘違いだったこと、ふたりでちゃんと言葉にして伝え合う大切さが身にしみたこと。
 それからすぐ入籍し、正式に誠さんの妻となった私は、早速藤さんに料理を教わっていた。
 その最中、家に尋ねてきたのは優くんだった。

「すみません、突然お邪魔してしまって」

「ううん。優くんにきららのことお任せしっぱなしだし……帰国の時もありがとう」

 あの日の翌日、きららも一緒に帰ろうと連絡したところ、優くんと一緒に帰国したいからと断られてしまった。優くんも構わないと言ってくれたのでお言葉に甘えて任せてしまったのだ。
 優くんのことで頭がいっぱいらしいきららに、例の彼女は女装した優くんでした、とは言えていない。きららを思うと、なんだか心苦しい。

「いえ。オレもきららちゃんと一緒にいれて楽しかったですし……。と、今日はお礼をいわれにきたんじゃないんです」