「デメリット」政略結婚であったことを強調されている気分になる。
 そして同時に誠さんの過去が垣間見えた気がした。表向きには誰もが羨む御曹司なのに、自分の生い立ちを自然にデメリットだと言ってしまう彼は、どんな風に生きてきたんだろう。たった13歳で遠い親戚に引き取られた彼はどんな気持だったんだろう。

 私は彼の腕の中から身を乗り出して、今にも謝りかねない彼の唇を塞いだ。
 昨日がファーストキスだった私は、もちろん自分からしたことなどなくて触れる、というよりも押し付けるような不格好なものになってしまう。

「謝らないでください。驚きましたけど……私だって話してないことばかりです」

 唇を離して、誠さんの両頬を掌で包む。

「私たちはもっと互いのことを知るべきですね」

 誠さんの瞼がゆっくり閉じられて、開く。艶やかな黒目が私を映す。

「ああ。ありがとう。聞かせてくれ、ゆきのの過去も、これからしたいことも、好きなもの嫌いなものも全部。俺も、話すから」

「はいっ! じゃあまずはブランチですね!」

 私は誠さんの腕から飛び出して、大きな窓のカーテンを開いた。

 ホテルでフルーツたっぷりのブランチをとって、誠さんの提案である場所へ向かった。

「わあ……素敵…!」