目的は、この政略結婚の真意を誠さんの口から聞くこと。それから私と重ねているであろう「彼女」について聞くこと。そして……それを聞くことによって迎えることになるであろう結末を受け入れること。
 よし! と自分の両頬を叩く。気合いを入れて、ドアノブに手をかけた。

 

 馴れないヒールに躓きながら、螺旋階段は諦めて大人しくエレベーターでカフェに向かうことにした。
 たった数秒の時間でさえ、早く着かないかなあと思ってしまうのは、乗り合わせたブロンドヘアの男性からの視線だ。気のせいだと思うには、あまりに直視されている。それに、2人しか乗っていないのに腕が触れあいそうな距離に詰められている。私は目が合わないように下を向くので精一杯だった。

「ねえ、アンタ日本人だよね?」

 まさかの日本語で話しかけれられて思わず返事をしてしまった。

「そう、です」

 私が返事をしたことに気を良くしたブロンドの男性は声をニヤつかせる。

「俺いい店知ってるんだ。よかったら一緒にいかない? 行きたいこところがあれば案内してやるよ」

 初対面でアンタ呼びは失礼だし、まとわりつくような視線が気持ち悪い。
 エレベーターがタイミングよく目的の階に到着して、私は逃げるようにかけだした。

「オイ! 待てよ!」

「きゃあっ!」

 力強く腕を掴まれて、馴れないヒールも相まってその場に倒れ込む。