「俺はお守りするためにシンガポールに来たんじゃないからな!?普通にナイトサファリも行きたいしシンガポール植物園も見たいしカジノも行ってみたい」

「いや、そんな熱弁してるとこ悪いけど観光じゃなくて学会のために来たんだからね私たちは」

おいおい、と突っ込んで笑う。
たしかにその下心にひとつ乗っかるのも悪くはない。

「そんな真面目なこと言ってると、お前のことサファリも植物園もカジノも連れて行かないけど」

ニヤリと笑う真田に、わざとらしく焦ってみせる。

「えーそんなこと言わずに一緒に行こうよ、お手て繋いでさ」

「デートという名目だもんな」

「デートって言えばあの三人も面白がって送り出してくれるもんね。晴れてお守りから解放される、と」

「お主も悪よのぉ」

「いえいえ真田様ほどでは」

ホッホッホ、と笑い合っていると、さらに距離が開いていた明里が遠くから私たちを呼ぶ。

「ちょっとそこのカップル二人!さっそくイチャついてないで私とマーライオン撮って下さい!教授も志摩先生も手ブレ酷くて!」

「「篠塚にだけは言われたくない」」

すかさず反論する教授と志摩に笑いながら私たちは三人の元に駆け寄った。

気の置けない間柄の真田とデートだなんて、想像するだけで平穏に観光を楽しめそうだなあ、なんて、この時はそんな暢気なことを考えていた。