此処は、とある街の駅前商店街である。街の人は、シャッター通りと呼ぶ。
不景気の御時世、例外なく個人商店の並ぶこの商店街も、大半はシャッターを降ろしたままである。

その中に、一件の古本屋がある。
店主は場違いな若者で、当世の言葉で言えばイケメンの部類になるであろう。
眉目秀麗であるが、茫洋とした瞳は何を見ているのか…


彼の名前は、尾上優、口の悪い輩は拝み屋ゆうさんと呼ぶ。元々の店主であった彼の祖母が引退するおり半ば強引に、この店を譲り受けたのであった。


彼の祖母はこの街では有名な拝み屋であった。所謂霊能者である。その手の類いの相談事を引き受け、また解決して来たので彼女の隠れ信者も多い。が、彼に彼女の能力が受け継がれいるかは分からない。
ただ、彼が彼女から受け継いだのは、店舗だけでなく、一匹の黒猫も無理矢理渡されたのだった。
猫の名前は、ゆき。とても、毛並みからは想像出来ない名前だが、牝猫で体躯的には3歳ぐらいであろうか?
しかし、彼女?ゆきは祖母の幼い頃から生きている。霊描である。
優は知ってか知らずか、特に気にする様子はない。
一日中店の本を読んで過ごしている。
横には、ゆきが眠っている。